2017年9月24日 15:42   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    ここ2~3年、部品加工の分野でも特に重要性を増してきているのが「微細加工」と呼ばれる加工領域です。微細加工とはサイズ0.3mm未満(=肉眼で確認することが困難なサイズ)の領域を指します。

    その背景にはIoTやAI化の進展により、各種電子部品やセンサ、カメラなどがどんどん緻密化していっていることが挙げられます。

    ところがこの分野は、いまだに加工ノウハウが確立されていません。例えば機械工学の切削加工理論においても、工具直径1mm以上の領域においては大半の切削挙動が理論的に解明されていますが、工具直径1mm未満の領域においては、9割の挙動が未だに解明されていないと言われます。

     

    そうした中、埼玉県入間市に本社工場を置く、株式会社入曽精密(従業員14名)では、昨年に0.1mm角の世界最小のサイコロを製造することに成功しました。

    0.1mmといえば、髪の毛の太さとほぼ同じです。

    図1

     

    さらにこのサイコロの製造に使用された工具は直径0.02mmであり、もはや肉眼ではほぼ見えないサイズの回転工具です。

    図2

     

    こうした極めて難易度の高い加工を、クリーンルームに設置された高価な特別な設備で行ったのではなく、普通の町工場で、市販されている汎用の普通の設備で行った、というところに大きな意義があります。同社の斎藤社長は「普通の町工場でも難易度の高い微細加工が行えることを証明したかった」といいます。

     

    こうした微細加工領域で求められるテクノロジーインフラは、一般加工領域のものとは全く異なる次元のものです。

    例えばマシニングセンタに工具をセットするためには工具長測定を行い、プログラム補正の必要があります。ところが通常のツールプリセッタで直径0.02mmの工具を接触させると、工具は簡単に破損してしまいます。あるいはレーザーによるプリセッタではミクロンレベルの測定が行えません。

    そこで、何と入曽精密では刃先直径0.1mm~0.02mm用の接触式工具測定器を内製しました(特許申請中)。

    次のハードルは0.1mm角のワークを保持するための冶具です。サイコロ6面体のうち、5面まではワークが母材上にある状態で加工を行います。そして最後の6面を加工するためには、そのワークを母材から切り離し、冶具の上で固定するのです。もちろん、この特製の冶具も自社で設計製作行いました。

    <冶具に取り付けられた0.1mm角のサイコロ>

    図4

     

    さらに大きなハードルとなるのが、この母材から切り離した微細な0.1mm角のワークを、いかに冶具にハンドリングするのか、ということです。ピンセットでつかもうにも肉眼では見えません。つかんでも静電気などでピンセットから離れなくなります。

    こうした技術課題を解決するために、ハンドリング装置と顕微鏡、除電装置からなるハンドリングシステムの開発まで行ったのです。

    図6

     

    この様に、微細加工のためのテクノロジーインフラを1つ1つ構築した上で、0.1mm角のサイコロは製造されたのです。しかも、普通の町工場の環境で、です。

     

    同社ではこの微細加工のノウハウを日本の町工場に広め、世界中から微細加工の仕事を日本に集めてくる構想を持っています。「シリコンバレーで加工の案件があっても日本には来ません。日本を通り過ぎて中国・深圳に流れてしまいます。この現状をまず変えたいですね。」と斎藤社長は語ります。

    この世界一小さなサイコロは各種メディアももちろんのこと、海外の学術機関からも注目を集めています。

    世界一あるいは日本一を狙うという取組みは大変意義深いことです。ぜひ御社におかれましても、世界一あるいは日本一を狙うテーマを考えてみられてはいかがでしょうか。




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    2017年9月19日 15:09   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    今年も10月8日(日)~10月14日(土)の1週間、毎年恒例のグレートカンパニー視察セミナーが開催されます。

     

    今年の視察先はアメリカ東海岸、ニューヨーク・コネチカット・ボストン各都市のグレートカンパニー16社を視察して回ります。

    今年も日本全国から100名を超える経営者の方がご参加され、経営者ご対象の海外視察セミナーとしては、恐らく日本最大の視察セミナーだと思われます。

     

    ご参考までに、下記URLから昨年のグレートカンパニー視察セミナーの様子をご覧いただけます。

    昨年はアメリカ東海岸、シアトル・サンフランシスコ・シリコンバレーのグレートカンパニーを視察してきました。

     

    ↓↓↓昨年のアメリカ東海岸グレートカンパニー視察の様子

    http://factory-business.com/visit/

     

    そうした中、今年の視察先の中で製造業のモデル事例ともなるのが、ボストンのロボット開発インキュベーターであるMASS ROBOTICS(マス・ロボティクス)です。

    ボストンを中心とするマサチューセッツ州は、アメリカのロボット開発の集積地のひとつとして知られています。そして、さらにロボットの開発力を強化することにより、このMASS ROBOTICSの設立が計画されました。

    このMASS ROBOTICSを後押ししているのは、地元のテクノロジー業界団体マサチューセッツ・テクノロジー・リーダーシップ・カウンセル(Mass TLC)。また、場所は、医療関連の情報システム、および運搬ロボットを開発するヴェクナ社が提供、総合研究機関のドレーパー・ラボラトリー社も中心になっており、すべて地元の企業や組織です。

    インキュベーターとは直訳すると「孵化器」となります。文字通り、卵から雛をかえす装置の様に、創業期のベンチャー企業(=スタートアップ)にモノ(=入居施設)・ヒト(=投資家を紹介)・カネ(=インキュベーター自らが投資することもある)を提供する組織のことをインキュベーターといいます。さらに最近ではモノ・ヒト・カネに加えてノウハウまで提供するスタイルのインキュベーターも増えており、 MASS ROBOTICSもロボット開発に特化している点で、このノウハウまで提供しているインキュベーターであるといえます。

     

    ちなみにアメリカのロボット産業は大半が軍事用です。

    例えばソフトバンクがグーグルから買収したことで有名になった、アメリカのロボットメーカー、ボストンダイナミクス社は、4本脚の軍事用ロボットが主力商品の1つです。

    既にアメリカ海兵隊が運用を開始しており、100kgを超える荷物を24時間にわたって輸送することが可能。かつ海兵隊員が移動できる地形の70%~80%について踏破できるそうです。

    用途としては軍事物資の輸送用に加え、無人機の回収を担わせる計画があります。実際に海兵隊の軍事演習にも参加しています。アメリカの航空産業は半分が軍事用と言われますが、私の所感ではロボット産業も同様であり、主要スポンサーはアメリカ国防総省です。

    それに対して日本のロボット産業は、ほぼ100%民生用であり、主に産業用として使用されています。特に「溶接」「塗装」「重量物搬送」など、人が行うのに困難な現場をロボットに担わせるのが日本のロボット産業の基本的な考え方です。

     

    従来のロボットはプログラム通りの動きしかできませんでした。

    その理由は、ロボットが複雑な画像認識ができるだけの高度なコンピュータを持っていなかったからです。

    ところがAI技術の進展により、ディープランニングというAI技術によってロボットは複雑な画像認識を行える様になりました。いわば「機械が眼を持つ」という時代が訪れたのです。

    こうした技術を可能にしているのが、昨今注目を集めているGPUチップのメーカーである米国エヌビディア社です。エヌビディア社のGPUチップは無人運転車の頭脳として、デファクト スタンダードのポジションを確立していますが、要は自動車が眼を持つことにより、無人運転も可能になるのです。

    ロボットが眼を持つことで、ロボットの用途は、これから爆発的に拡大していくと見られています。今後、ロボットが活躍する新たな用途としては下記の分野が見込まれています。

     

    <今後見込まれるロボットの新たな用途>

    ・介護施設や病院などでの見守り・介護

    ・医療(X線、CT、手術など)

    ・警備、防犯

    ・顔による認証・ログイン・広告、表情読み取り

    ・入国管理、警察業務、輸出入管理業務

    ・防災系(河川、火山、土砂崩れの見張り)

    ・重機系(掘削、楊重)、建設現場系(溶接、運搬など)

    ・農業系(収穫、選果、防除、摘花、摘果)

    ・自動操縦系(ドローン、小型運搬車、農機、建機)

    ・自動運転系、物流

    ・調理系(外食全般)

    ・片付けロボット(家庭、オフィス、商業施設)

    ・新薬発見や新素材の開発

    ・廃炉系(深海や鉱山、宇宙も含めた極限環境)

     

    この様に、ロボット産業は今後明らかに成長が見込まれる分野であり、アメリカではベンチャーキャピタリストによるロボット産業への投資が、わずか数年で2倍の20億ドルにも及んでいます。

     

    MASS ROBOTICS設立には、こうした背景があるのです。

    製造業の方はもちろんですが、製造業の方以外もMASS ROBOTICSから取り入れるべきポイントは多々あります。それは、その分野における有力企業が、その地域で優秀な人財を囲い込み・つなぎとめるためのエコシステムをつくること、その中心にNPOを据えるという地域(ローカル)モデルです。

    前述の通り、MASS ROBOTICSは、地元の産業用ロボットメーカー兼医療用システムハウスであるヴェクナ社と、地元のテクノロジー業界団体が中心になって設立されています。

    こうしたインキュベーターの存在がハブとなり、その地域に特定産業の集積を促すこともできます。同インキュベーターの場合は、ボストン周辺をこれからの成長産業であるロボット産業の集積地にしていきたい、という狙いが根幹にあります。

     

    このMASS ROBOTICSは、今回まわる16社の視察先の中の1つです。こうしたモデル企業を5日間の視察期間の中で、各分野の経営者・専門コンサルタントとともに密度濃く学ぶ場が、グレートカンパニー視察セミナーです

    日本一を目指すためには、世界一を知らなければならない、という思いで本視察セミナーは企画しています。

     

    来年は4月のハノーバーメッセとともに、ドイツが訪問先として決定いたしました(視察セミナー期間2018年4月22日~29日)。

    テーマはインダストリー4.0と、それによる生産性向上です。

    詳細は後日、あらためてご案内させていただきたいと思います。

    ぜひご参加をご検討いただければと思います。




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    2017年9月10日 20:02   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    先週の金曜日は、大阪・梅田のスカイタワービルにて、船井総合研究所 ファクトリービジネス研究会主催 ものづくりVA・VE技術マッチングフェアin大阪を開催しました。

    ご来場されたのは、

    ・大手電子部品メーカー 設備開発部門キーマン

    ・大手重工メーカー 設計開発部門キーマン

    ・大手分析装置メーカー 設計開発部門キーマン

    ・大手マテハン装置メーカー 開発購買部門キーマン

    ・大手自動車部品メーカー 工機部門キーマン、

    その他、100名を超えるエンジニア・バイヤーの方がご来場されました。

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    この、船井総研ファクトリービジネス研究会主催の商談会は、次の3点で通常の商談会と異なります。

     

    まず1つ目にご出展されている部品加工業の皆様は、全てファクトリービジネス研究会の会員企業様であり、船井総研のコンサルティング先が半数以上です。

    同研究会は「脱価格競争・脱下請け」「新規優良顧客の開拓」「新技術の開発」を理念に運営されています。

    部品加工業の様な受託型製造業が脱価格競争・脱下請けを行う第一歩は「VA・VE提案」を行うことです。

    同研究会の会員企業様は全て「VA・VE提案」が可能であり、設計開発者を対象とした技術ハンドブックを持っており、技術セミナーの開催も可能です。

    つまり出展者の質が通常の商談会と比較して格段に高い、ということです。

     

    2つ目は商談会のコンセプトが「VA・VE技術」と銘打っていることから中小企業の来場がほとんど無く、優良大手企業の来場が大多数だということです。

    通常の商談会だと、自社が親会社からの仕事でいっぱいになってしまった同業の下請け中小企業が、いわば孫請け企業を探しに商談会に来ているケースが多いです。

     

    3つ目は、バイヤーとサプライヤーをあくまでも対等に扱っている点です。

    通常の商談会の場合、大手企業などのバイヤーが席に座り、仕事をもらう側のサプライヤーが、そこに並びます。

    ところが船井総研の商談会の場合はこれが逆になります。サプライヤーが席に座り、バイヤーがそこに並ぶスタイルを取ります。

    中には「仕事を出す側の発注者側が、サプライヤーから待たされるのはおかしい」と言われるご来場者の方もいますが、こうした感覚のバイヤーがいる大企業というのは、これからの時代非常に厳しくなるのではないでしょうか。

     

    今回のマッチングフェアでも、ご来場される大手企業バイヤーの方向けに、未来調達研究所の牧野取締役より「資源高時代の調達戦略」についてのご講演をいただきました。その中で興味深かった話が次の2つです。

     

    1.正規雇用者と非正規雇用者の賃金

    働き方改革の中で、正規雇用者の賃金と、非正規賃金の雇用者を合わせる、という動きが叫ばれているが、これは必ず「非正規雇用者の賃金を正規雇用者なみに引き上げる」のではなく、「正規雇用者の賃金を非正規雇用者と同等に引き下げる」動きに帰結するだろう。

     

    2.グローバル化

    今、日本のホワイトカラーの人件費を100とすると、中国が50であり、インドが10である。

    AIに仕事を奪われる以前に、実は猛烈な勢いでオフショア(仕事の海外移転)が進んでおり、付加価値の出せない仕事は気が付いたら海外に移転していく可能性が高い。

     

    実際、アクセンチュアという大手コンサル会社がアメリカにあります。同社はNY証券取引所上場後、グローバル従業員が4万人から40万人に急拡大しています。

    同社が急成長した理由は、従来のコンサルティング業務に加えて、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業をスタートさせたことです。

    同社のBPOとは、大手グローバル企業の情報システム部門のコスト査定を行い、そのコストを下回る費用で同等のサービスを提供する、というのが基本スキームになっています。

    なぜ同じサービスを下回る費用で提供できるかというと、前述のオフショアが前提となっているからです。

    BPOの基本的な考え方は、ノン・コア事業を切り離してコストダウンを進めることにあります。BPOビジネスは世界的に伸びていますが、言い換えれば身の回りの仕事が急に無くなる可能性がある、ということです。

    そう考えると、前述の1.と2.は相互に連動していることがわかります。こうしたことから考えられる今後しばらくの時流は「デフレ」がまだまだ続く、ということだと思います。

     

    「デフレ」に対しての経営上の対策としては

    ・研究開発

    ・価値を売る

    ・圧倒的な一番をつくる

    ということになります。

    さらに目下、日本においては「人手不足対策(=採用力アップ+定着率アップ)」が急務です。

    「デフレ対策」さらに「人手不足対策」が、しばらくは経営上の大きなテーマになると思います。




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