2018年1月22日 22:12   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    <第9回目:>製造業バブルの影で、疲弊する若手社員

     

     

    つい先日、某大手機械要素メーカーの若手営業マン(26歳)と話をする機会がありました。

     

    彼は新卒で、その某大手機械要素メーカーに入ったのだそうですが、転職を決意していて、紹介会社経由で5社もの面接を受けているとのこと。

     

    私が「何で辞めたいの?」

     

    と聞くと、

    彼は「所詮、価格競争で決まる仕事だから、僕が営業として間に入る付加価値が無いんです」とのこと。

     

    ちなみに、彼が勤務する某大手機械要素メーカーは、生産財業界の人なら誰もが名前を知っている一部上場のメーカーです。

     

    彼の勤務する会社は業績も安定しており、彼の職場でも辞める人というのはほとんどいないそうです。

    「僕が辞める、といったら職場の上司はさぞ驚くと思います・・・」

    と彼は言っていましたが、営業の仕事とは価格競争の回避です。

     

    いかに成熟分野といえども、必ず問題解決提案は可能であり、価格競争だけで決まる、ということはあり得ません。

    営業力が低いから価格競争に陥るのです。

    生産財営業の鉄則は信用・信頼です。「この人なら信用できる」は当たり前で、さらに「この人なら頼れる」と思ってもらってはじめて価格競争が回避できるのです。

     

    最大の問題は、彼の様な若手社員に対して、生産財営業の鉄則を教育する様な上司がいない、ということでしょう。

     

     

    この様に、製造業バブルに沸く業界の中で、ひっそりと会社を去る若手社員が後をたちません。

     

     

    私は10年ほど前に、「必ず売れる!生産財営業の法則100」という本を同文館出版から出版しました。現在でもこの本はコンスタントに売れている様です。

     

    この本の中で何度もお伝えしている生産財営業の鉄則は、前述の信用・信頼の話に加えて、「こちらから売り込まない」ということです。

     

    売り込むのではなく、相手にとってメリットのある提案を重ね、その中で本当の顧客のニーズを引き出し、そのニーズに対して問題解決提案を行う、ということです。

     

     

    当時は現在ほどインターネットのノウハウがなく、営業担当者がいかにヒアリングスキルを駆使して、顧客の潜在ニーズを顕在化させるか、といったことを同書でお伝えしていました。

     

     

    しかし現在は、簡単に顧客ニーズを集める方法があります。

     

     

    それがデジタル・マーケティングです。

     

     

    このデジタル・マーケティングについては下記セミナーにお越しいただければ全てがわかります。

     

     

    http://www.funaisoken.co.jp/seminar/027574.html

     

     

    既存顧客であれ、新規顧客であれ、営業担当者だけに顧客ニーズ収集を任せるのではなく、デジタルの力を活用するのです。

    その上で、顧客からの引合いが有望なHOT商談のレベルになりそうな時点で、営業担当者にそのHOT商談を引き渡す仕組みをつくるのです。

     

     

    生産財業界ほど、営業のデジタル化の相性の合う業界はありません。

     

    なぜなら情報の認知から意思決定までに時間がかかり、引き合いから商談に至るまでの“熟成”にリードタイムを要するからです。

     

     

    なぜ生産財業界は、客先の情報の認知から購買の意思決定までに時間を要するのでしょうか?

     

    それでは生産財業界は「タイミング」が合わない限り、購買に至らないからです。

    「タイミング」とは・・・

     

    ・新商品開発のタイミング

     

    ・モデルチェンジのタイミング

     

    ・人事異動でキーマンが入れ替わるタイミング

     

    ・既存業者が何らかの失敗をするタイミング

     

     

    逆に言えば、いかに素晴らしい製品であったとしても、あるいはいかに安い見積りであったとしても、タイミングが合わなければ生産財は絶対に売れません。

     

     

    ところが多くの生産財メーカーは、前述の一部上場クラスの大手機械要素メーカーですら、次の全営業プロセスを営業担当者に丸投げしているのが現状です。

     

     

    STEP1:顧客への情報発信

    STEP2:顧客の認知

    STEP3:顧客のさらなる情報収集

    STEP4:購買への醸成

    STEP5:購買の意思決定

     

     

    営業のデジタル化は、上記STEP1~STEP4をマーケティングオートメーションなどのデジタル技術で自動化し、営業担当者はSTEP5のみを注力する仕組みをつくるものです。

     

     

    何より、生産財業界で営業のデジタル化を行うと、今まで見えなかった顧客ニーズが見える様になり、成熟商品だと思っていた自社商品に、まだまだ市場のニーズがある、ということを実感することができます。

     

    その結果、組織が活性化します。

     

    そうすると、冒頭に述べた若手営業マンの様な、安易な転職は考えなくなるのではないかと私は思います。

    なぜなら自分の仕事の趣旨が理解でき、仕事がおもしろくなるからです。

     

    私は人財育成の上でも、営業のデジタル化は極めて有効であると考えています。

     

    ~次回に続く~




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    2018年1月15日 00:09   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    <第8回目:人を1人も増やさずに劇的に生産性を上げる方法>

     

    従業員を1名も増やすことなく、劇的に生産性を上げる方法が、今あらためて注目を集めています。

     

    それは「インサイドセールス」の導入です。

     

    あらゆる組織の中で、最も非効率な組織は間違いなく営業部門です。

     

    なぜ営業部門は非効率なのか。それは、営業マンは自分が行きやすい顧客にしか訪問しないからです。本来、営業訪問は顧客ランク分けに基づいて行わなければなりません。

    顧客ランク分けは一般に、

     

    a)縦軸に自社からその顧客への売上高

    b)横軸にその顧客の購買力

     

    をとって行います。

     

    例えば機械工具ルートセールスの場合でいえば、上記a)は月次売上100万円以上、と規定すればよいでしょう。

     

    ところが問題は、横軸の上記b)です。

     

    その会社の購買力は、営業マンの見る目・能力によって大きく変わります。例えば現状、A社という顧客があったとします。

    A社は毎月十数万円しか購入していません。しかしA社は上場会社クラスの中堅企業です。

    このA社を見た時、経験豊かな前向きな営業マンであれば「あれも売れるし、これも売れそうだ、この会社はポテンシャルが高い!」となります。

     

    しかし経験が乏しい営業マン、あるいは経験があってもネガティブな営業マンだと「この会社はこれ以上攻めても売上は上がらないよ・・・」「アポも取りにくいし、行かなくていいよ・・・」

    と、なってしまうわけです。

     

    寓話で、裸足のアフリカ人に靴を売れるか売れないか、という話があります。ポジティブな人は「これはチャンスだ!靴を履いていないのだから靴を売り放題だ!」となります。

    ところがネガティブな人は「みんな裸足だから靴なんて売れるわけないよ」となるわけです。

     

    残念ながら、世の中の大半の人はネガティブです。

     

    以前に日本電産の永守会長が言われていましたが、

    (1)自分自身で自分に火をつけて燃えられる人

    (2)人に火をつけられれば燃えられる人

    (3)火をつけられても燃えない人

    の3種類の人がいるといいます。

    (1)の人が5%から多くて20%くらい、(2)の人が大半で60%くらい、(3)の人もやはり5%から20%くらいいる、といいます。

     

    いわば現在の営業部門は、トップセールスと言われる(1)の人に多くを依存しているわけであり、(2)をもっと有効に活かせる仕組みをつくった上で、人手不足の昨今は(3)もうまく活用していく必要があります。

     

    その仕組みが「インサイドセールス」なのです。

     

     

    では、「インサイドセールス」とは何か?

     

    例えばここに、7名の営業マンがいたとします。

    7名でフォローできる範囲は、1ヶ月の営業の稼働を最大18日として、1日3件訪問が可能であれば、この7名でカバーできる顧客数は毎月 7名×18日/月 ×3社=378件 となります。

     

     

    ここで、毎年2割近く業績を伸ばしている某社は、この7名の営業マンのうち2名をインサイドセールスにして、5名を営業マンとしました。

     

    インサイドセールスは、主に電話はメール、DMなどの送付を行い、顧客との接点を維持します。

     

    この某社ではお客様のランクを次の様に分けています。

     

    1)毎週営業マンが訪問すべき重点顧客

    2)毎月営業マンが訪問すれば良い訪問顧客

    3)営業マンは訪問せずインサイドセールスがフォローする維持顧客

    4)人的フォローをしないメルマガ・DM送付のみの放置顧客

     

    その結果、カバーできる顧客数は、

     

    <営業担当>

    5名×18日/月 ×3社=270件

     

    インサイドセールスは訪問しませんから、1日あたり30件くらいのフォローが可能になります。ですから、

     

    <インサイドセールス>

    2名×18日/月 ×30社=1080件

     

    つまり、この某社はインサイドセールス制をしくことにより、毎月378件しかフォローできなかった顧客フォローが、

    270件+1080件=1350件

    と、4倍近くもの顧客フォローを行うことができる様になったのです。

     

     

    もう一度繰り返しますが、この某社ではお客様のランクを次の様に分けています。

     

    1)毎週営業マンが訪問すべき重点顧客

    2)毎月営業マンが訪問すれば良い訪問顧客

    3)営業マンは訪問せずインサイドセールスがフォローする維持顧客

    4)人的フォローをしないメルマガ・DM送付のみの放置顧客

     

     

    そしてポイントは、上記3)のインサイドセールスがフォローしている顧客も、購買意思がでてきて営業担当者のフォローが必要な段階になれば、上記2)あるいは1)にランクアップする、ということです。

     

    ちなみに、この「インサイドセールス」という制度は、国土の広いアメリカでは、ずっと昔から当然の様に導入されています。

    なぜならあまりに国土がひろすぎ、とても営業マンだけで全米をカバーできないからです。

    ですからインサイドセールスと営業担当者とを分業して、効率よく営業を行わざるを得ない、という事情があったのです。

     

    日本の場合は国土が狭く、かつ不況だなんだといいながらも、結果的に右肩上がりの成長を遂げていたため、営業は営業担当者の聖域として、ある種放置されてきたといえます。

     

    しかしリーマン・ショックによる需要蒸発、グローバル化・デジタル化による産業構造の変革、さらに昨今の人手不足・働き方改革という荒波をうけて、いよいよ最後の聖域も変革を迫られている様に私は見えます。

     

    しかし一部の先進的な企業は前述の「インサイドセールス」をいち早く取入れ、社員を1名も増やすことなく生産性アップに成功しているのです。

    前述の某社も、毎年115~120%の成長を遂げ、従業員数十人の中小製造業ながら、全国に3000社近い顧客を抱えています。

     

     

    また昨今、この「インサイドセールス」が注目を集めているのにはもう1つ理由があります。

     

    その理由とは、この「インサイドセールス」は今まで述べてきた「営業のデジタル化」と、極めて親和性が高いのです。

     

    ~次回に続く~




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    2018年1月3日 23:10   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    新年あけましておめでとうございます。

    本年もファクトリービジネスレポートを引き続きご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

     

    東京大学大学院教授の吉見俊哉氏は、同氏の著書「大予言「歴史の尺度」が示す未来」の中で、歴史はある一定の周期で変化を繰り返しており、マクロにみればある程度の未来予測、言い換えれば予言が可能だと述べています。

     

    まず、吉見教授によると歴史は25年周期で変化が見られるといいます。それによると1995年~2020年は「衰退と不安の25年」であり、日本が終戦を迎えた1920年~1945年の「経済恐慌と戦争の25年」に匹敵する時代であったと考察しています。

     

    ちなみに、この25年周期を足した50年周期説が、有名なソ連の経済学者ゴンドラチェフの波です。

     

    さらに吉見教授は、この25年周期に加えて、歴史はさらに長い単位にあたる500年周期の波があるといいます。これは歴史家フェルナン・ブローデルの名前をとって、「ブローデルの波」と呼ばれます。

    歴史家ブローデルは自著の中で次の様に述べています。

     

    “経済学の領域におけるここ20年か30年の最も重要な発見は、時間の座標の発見、経済活動の周期性の発見である。”

     

    例えば21世紀の現在、世界はゼロ金利であり日本をはじめ世界中がカネ余りの状態です。市場が飽和し、新たなフロンティアが失われた結果、先進国を中心に世界中がデフレに陥っているわけです。

     

    同じ状況が500年前の16世紀にもみられました。ジェノバの「利子率革命」がそれです。

    この革命は、当時の世界経済を牽引していたイタリアのジェノバで金利が極度に低くなっていった状況を指します。この時代、イタリアの銀行にはスペイン皇帝が新大陸で得た大量の銀が集まっていました。しかし投資が隅々まで行き渡ってしまったことで、資本がだぶついているのに投資先がない状態に陥ります。

     

    一般に、利子率が2%を下回れば、資本側が得るものはゼロであり、そのような超低金利が10年を超えて続けば既存の経済・社会システムは抜本的な構造改革を迫られると同書は指摘しています。

     

    ちなみに、日本の国債利回りは既に20年以上も2%以下という超低金利が続いており、「経済史上、極めて異常な状態に突入している」のです。

     

    なお、日本が徳川時代に鎖国を行った理由は、キリスト教化を防ぐという理由もありますが、この様に16世紀は世界的に経済が収縮期であり、国際貿易を行うメリットがそれほどなかった、ということも大きな理由と考えられています。

     

     

    この様に、主に25年周期と50年周期の知見から、同書では2020年以降を次の様なマトリックスで設定しています。

     

    ・2020~2045年 収縮期

    矛盾の激化と構造改革の努力、日本社会の変革期

     

    ・2045~2070年 拡張期

    日本における危機の小康、全世界的な危機の進行

    ※ちなみに、コンピューター(AI)の知能が人間の知能を凌駕すると言われるポイント、シンギュラリティ(Singularity)が発生するのは2045年と予測されています。

     

    ・2070~2095年 収縮期

    全世界的な資本主義の危機と新しい社会への模索

     

    ・2095年~

    持続可能なポスト資本主義社会への緩やかな移行

     

     

    詳細は同書を一読いただければと思いますが、同書によると特に日本の近未来は悲観的です。また様々な示唆は得られるものの、ビジネス的な具体策が提示されているわけでもありません。

     

    その点で、2018年にあらゆる経営者が押さえておくべきポイントは次の2つだと私は思います。

     

    1.デジタル化

    2.多様性の受け入れ

     

    昨年10月、毎年恒例のグレートカンパニー視察セミナーで米国東海岸(ボストン・ニューヨーク・コネチカット)のグレートカンパニーを視察しましたが、中でも私が強く示唆を受けたのはブルームバーグ社です。

     

    昔のニュース番組ではよく「ロイター発共同によると・・・」と、国際通信社であるロイターの名前がよくでてきました。ところが現在よく見られるのはブルームバーグです。

    それもそのはずで、ロイターは記者によるストライキが頻発して経営危機に陥り、現在ではカナダのトムソン社の傘下に入り、トムソン・ロイターと社名も変わっています。

     

    ではなぜロイターは衰退し、ブルームバーグは覇権を握ったのか。

     

    それはロイターが記者という属人を中心とする通信社であったのに対し、ブルームバーグは社員の1/4がエンジニアで自社を「テクノロジー企業」と定義する、デジタル企業だからです。

     

    ブルームバーグの主な収益源は“ブルームバーグ端末”と呼ばれる情報インフラの端末であり、世界中に32万5000ものクライアントを抱えています。同社は経済誌の発行やテレビ番組、Webサイトの運営など様々な事業を手掛けていますが、確固たる収益源はこの“ブルームバーグ端末”なのです。

     

    あらゆる業界にとって、この「デジタル化」への対応は避けて通れないものになっています。

     

    以前、このコラムでも取り上げましたが今、注目の本に「対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方」(日本経済新聞出版社)があります。

     

    一夜にしてタクシー会社から顧客を奪ってしまうウーバー、同様にホテル・旅館から顧客を奪いつつあるエアビーアンドビーなど、デジタルを武器にする新興企業が成熟産業の顧客を奪い取ることが日常となりつつある中で、既存企業はいかにこうした新興企業に対抗していくべきか、ということを述べているのが同書です。

     

    その中で同書の主張は「円熟した企業にはいまでもかなりの価値があり、業務と主要な内部プロセスをデジタル化することで、そうした価値を引き出せる」というものです。

     

    私の専門分野はBtoBの製造業ですが、多くのBtoB企業にとってデジタル化すべきプロセスは「営業」であるといえます。一見、成熟産業に見える業種・業態でも、「営業のデジタル化」を進めることで今までつかめなかった様な顧客ニーズを把握することができます。

     

     

    またデジタル化と同様に、「多様性の受け入れ」もこれからの経営環境には必須です。

    「多様性の受け入れ」とは一言でいえば「働き方改革」です。残業を無くし、年間休日を増やし、仕事とプライベートを両立できる働き方を推奨できる会社・組織でなければ生き残れない時代が明らかにやってきています。

    正直に言えば、私も根本は昭和の人間ですので、残業をするな、休日は休め、という「働き方改革」には生理的に違和感を覚えます。

    しかしこれも「時流」ですので、経営者は「時流適応」できなければ生き残ることはできません。

    今まで10の時間をかけていた仕事をいかに8の時間で質を落とさず、もっというと質を上げて行うのか、そして空いた2の時間を自己研鑽なり余暇なりにあてるという働き方改革を、組織トップ自らが考えて実行しなければならない時代が2018年です。

     

    ちなみに、前述の「大予言「歴史の尺度」が示す未来」に話を戻しますが、同書によると世代間の距離はだんだん小さくなっているといいます。例えば戦争世代と第一戦後世代の世代間の差が0.19とすると、団塊ジュニアと新人類ジュニアの世代間の差は0.03だといいます。

     

    また親子の差が1973年は0.31だったのに対し、2003年には0.06、さらに2008年になると△0.01という、親子の世代間の差はほぼ消失してしまったという驚くべき結果がでています。

     

    従って我々も「今の若い世代は理解できない」と口にすることなく、前述のデジタル化と働き方改革を粛々と進めていく必要がある、ということなのです。




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