2017年5月27日 15:16   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    個人的な話で恐縮ですが、私は昭和48年生まれで今年40代半ばになります。

    そんな私と全く同じ歳の部品加工業のモデル経営者の方が3人、京都にいらっしゃいます。3人とも私と同じく昭和48年生まれです。

     

    お1人目は京都府宇治市に本社のある、株式会社名高精工所(従業員100名)専務取締役の名高新悟様です。

    同社は機械加工の量産、という国内では難しい業態でありながら、アメーバ的に第1工場にはじまり、現在では第8工場まで事業を拡大されています。

    そんな名高精工所のコンセプトは「国内で生き残る量産工場」です。同社は量産の仕事をしている会社としては珍しく、取引先はなんと120社以上にも及びます。

    また同社の武器は「冶具力」と「ロボット力」による省力化・効率化技術です。

    同社の設備の主体はマシニングセンタやCNC旋盤ですが、冶具を工夫することにより、最低限の段取り時間で高精度の加工を維持、またロボットと横形マシニングセンタを活用することにより、設備の無人夜間稼働で生産性をあげています。

    その結果、人件費が高い国内においても海外と勝負ができる生産体制を構築、特に同社の「冶具力」は目を見張るものがあり、同じ京都の私の関係先も、同社の現場を見に行き勉強しているほどです。

    そして同社は設備投資も戦略的に行っています。

    万が一、今流れている仕事が切れてもその設備を他の仕事に流用できる様、特定の仕事にしか使えない専用機的な設備は導入しないことにしています。

    まさに同社は国内で生き残る機械加工量産工場のモデル工場といえるでしょう。

     

    そしてお2人目が京都市伏見区に本社をおく、株式会社クロスエフェクト(従業員30人)の代表取締役 竹田正俊様です。

    同社は経済産業省主催 第5回ものづくり日本大賞で見事「内閣総理大臣賞」を受賞された日本トップクラスの試作加工・樹脂加工のモデル企業です。

    同社が重視するのは何よりも「スピード」。例えば一般の製造業で使われているのは“日報”です。

    しかし同社では“日報”は使いません。日単位の管理では遅すぎる、というのです。同社で使っているのはスマートフォンを活用した“秒報”です。

    そんな竹田社長のお父様にあたる先代は、現在のクロスエフェクトとは全く真逆の製造業を経営されていました。

    例えば現在のクロスエフェクトでは、何よりも特定顧客・特定業界依存を嫌います。ですから新規開拓に非常に熱心です。

    しかし竹田社長のお父様にあたる先代は「よらば大樹のかげ」が口ぐせで、某大手家電メーカー1社のみと取引をしていました。

    それで従業員は100名以上もいたわけです。

    「特定顧客だけとの取引はリスクが高すぎる」と、竹田社長は意見しましたがお父様は聞く耳をもちません。

    その後、この某大手家電メーカー自体が経営危機に陥り、結局お父様の会社は解散に追い込まれてしまいました。

    こうした原体験のある竹田社長は、とにかく事業にエネルギッシュです。単なる試作加工・樹脂加工だけでなく、設計支援・開発支援まで行うため、現在シリコンバレーで盛んなハードウェアアクセラレーターにも参画。さらに最近では日本で唯一の「試作ファンド」を立ち上げるなど、今や製造業の枠にとらわれない活動をされています。

    さらに同社の見逃せない点は、その本社工場そのものにあります。

    クロスエフェクトの本社工場は、米国グーグル社の様なコンセプト・デザインであり、製造業というよりもクリエイターの様な環境を社員に、お客様に、さらには求職者(学生など)に提供しています。

    同社の躍進の要因の1つは、この本社工場そのものにあります。

    同社は間違いなく日本の製造業をリードしている1社でしょう。

     

    さらに3人目が、京都市右京区に本社をおく、株式会社最上インクス(従業員95名)の代表取締役社長 鈴木 滋朗様です。

    同社は日本を代表する有名な精密薄板試作、ならびに精密プレス加工業です。

    最上インクスの競争力に秘訣は、市販の設備を活用しながらも、これはというコア部品については社内で内製した設備により、加工プロセスそのものを内製化している点にあります。

    特に近年ではIoTの導入に積極的に取組み、付加価値率ならびに稼働率を従来の何と2倍にまで高めることに成功されています。

    さらに同社の鈴木社長は「営業利益率20%を目標にしている」と語ります。

    まさに同社はIoTを活用した、デジタルエンジニアリングによる生産性アップのモデル工場と言えるでしょう。

     

    そして今回、何とこのモデル企業3社を1日でまわり、上記3名のモデル社長様からご講演いただく、部品加工業「社長の仕事視察セミナーin京都」を、来る7月7日(金曜日)9:30~17:30にて企画いたしました。

     

    ↓↓↓社長の仕事視察セミナーin京都の詳細はこちら!

    http://www.funaisoken.co.jp/seminar/020197.html#_ga=2.78567249.459031116.1495865018-845576960.1487413431

     

    こうした3社ものモデル企業の現場を目にし、かつそのモデル企業の社長の講演を聞ける機会は中々ないと思います。

    社長・経営者の方のご参加はもちろん、これから事業承継を考えておられる次期経営者の方のご参加もお奨めしたいと思います。

    本視察セミナーはバスや会場の関係もあり、先着35名様限定となっております。ぜひお早目のお申込みをお願い申し上げます。




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    2017年5月20日 20:22   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    先日、日本経済新聞の一面に米国3M社が特集されていました。

    3M社といえば、ポスト・イットや研磨剤などで日本でもよく知られています。同社はアメリカの大企業ではありますが、我々日本の中小企業も大いに学ぶべき点があります。

    まず同社は、1959年から1年も途切れることなく増配を続けてきています。また配当そのものも100年以上継続しています。

    この間に大恐慌も第二次世界大戦もリーマン・ショックもありましたが、途切れることなく配当を続けてきているのです。

    同社のインゲ・チューリン社長によると、その要因は同社の経営の重要指標NPVI(New Product Vitality Index=新製品売上比率)だといいます。

    全売上高のうち、過去5年以内に発売した新製品が占める比率を示すもので、同社では25%を最低限の達成目標としています。

    現在は30%にもおよぶそうです。

    チューリン社長によると、既存の商品は陳腐化によって毎年4%程度売上が逓減していくそうです。その結果、5年経つと2割減少します。

    その穴を埋め、会社全体の売上高を押し上げるには、切れ目なくイノベーションを起こし、製品群の新陳代謝を活発にしなければならない、といいます。

    これは、我々 部品加工業の様な受託型製造業や、機械工具商社の様な生産財商社も同じことです。

    我々 部品加工業の様な受託型製造業や、機械工具商社の様な生産財商社の場合は、NPVI(New Product Vitality Index=新製品売上比率)ではなく、

    NCVI(New Custmer Vitality Index=新規顧客売上比率)が経営重要指標になります。

    私はリーマン・ショックの翌年2010年2月に、次の書籍を出版しました。

     

    ↓↓↓なぜこの会社には1カ月で700件の引き合いがあったのか?

    https://www.amazon.co.jp/%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%81%93%E3%81%AE%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AB%E3%81%AF1%E3%82%AB%E6%9C%88%E3%81%A7700%E4%BB%B6%E3%81%AE%E5%BC%95%E3%81%8D%E5%90%88%E3%81%84%E3%81%8C%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B-%E7%89%87%E5%B1%B1-%E5%92%8C%E4%B9%9F/dp/4806136220

     

    この書籍を出版したきかっけは、リーマン・ショックの様な大不況においても、業績を落とさない、あるいは業績を落としてもいち早く立ち直る会社の共通点を見出したからです。

    それは前述の新規顧客売上比率が5%以上の会社、ということです。

    新規顧客売上比率とは、取引開始から1年以内の顧客の売上高を、全売上高で割り算したものです。

    5%というと、少ない、と感じるかもしれませんが、BtoBのルートセールスの場合、取引開始して2~3年で大口顧客に育っていくものです。従って取引開始で5%というと、なかなか大変な数値なのです。

    前述の米国3M社の場合、過去5年間に発売した新製品の売上比率25%が目標値です。

    私が提唱する取引開始1年間で5%という数値は、5年間で25%となりますから、奇しくも3M社が提唱する25%と一致します。

    ちなみに、米国3M社は売上高3兆円という超大企業であるにも関わらず、先期2016年12月期の営業利益率は24%にも及びます。

    自社製品をお持ちの会社の場合はNPVI(New Product Vitality Index=新製品売上比率)を、

    自社製品を持たない会社の場合はNCVI(New Custmer Vitality Index=新規顧客売上比率)を、ぜひ自社の重要経営指標としていただきたいと思います。




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    2017年5月14日 14:07   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    前回のコラムでもお伝えしましたが、我々は今、目の前には大きな氷山の様な「大不況リスク」に直面していますが、その先には50年に1度の大きなチャンスが我々を待っています。

    それが「AIゴールドラッシュ」です。

    かつてのソ連から西側に亡命した経済学者ゴンドラチェフの仮説、“ゴンドラチェフの波”によると、歴史的に世界は50~60年ごとに大きなイノベーションにより、パラダイムシフトを強いられます。

    実際、歴史を振り返ると、

     

    第一の波:1800年代 蒸気機関・紡績(英国)

    第二の波:1850年代 鉄鋼・鉄道・電信(米国)

    第三の波:1900年代 電気・自動車・化学・石油(米国)

    第四の波:1950年代 エレクトロニクス・原子力航空工学・コンピュータ(米国・日本)

     

    と、50年ごとに大きなパラダイムシフトが起きています。

    そしてそのパラダイムシフトに乗った人たちは巨万の富を築いています。

    では、第五の波はいつ来るのでしょうか?上記の年表でいくと2000年代、ということになりますが、実は今は世界中が20年にわたる“長期停滞(Secular Stagnation)”の中にいます。

    この“長期停滞”は19世紀末にスウェーデンの経済学者ヴィクセルが提唱した概念だそうですが、2013年11月のIMFの会議の席上、ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授が問題提起したことで再び注目を集めるキーワードとなったそうです。

    実際、2016 年4月のIMFの世界経済見通しの副題は、“Too slow for too long”(余りにも長期にわたる余りにも緩慢な成長)と題されています。

    「失われた20年」という言葉がありますが、この長期停滞の20年を加味すると、第五の波は2020年代ということになります。

     

    第一の波:1800年代 蒸気機関・紡績(英国)

    第二の波:1850年代 鉄鋼・鉄道・電信(米国)

    第三の波:1900年代 電気・自動車・化学・石油(米国)

    第四の波:1950年代 エレクトロニクス・原子力航空工学・コンピュータ(米国・日本)

    ~20年にわたる長期停滞(Secular Stagnation)~

    第五の波:2020年代 AI・IoT・ナノテクノロジー・ロボティクス・生命工学(米国・日本)

     

    第五の波の中でも特に中心的存在となるのがAIです。

    つまりこれから、18世紀の産業革命の蒸気機関と同様に、AIが社会を変える中心的な位置づけになる、ということです。

    私はこれを「AIゴールドラッシュ」と呼んでいます。

    なぜゴールドラッシュなのか?

    前回のコラムでも述べましたが、18世紀にアメリカ西海岸で起こったゴールドラッシュで最も儲けたのは金の採掘者ではありません。

    金の採掘者に物資を供給した人たち。具体的にはジーンズを売ったリーバイスや、スープの缶詰を売ったキャンベルといった人たちです。

    今回の「AIゴールドラッシュ」も同じです。

    AIそのものはソフトウェアに過ぎません。従って一握りの天才的人物によって開発・拡販が可能であり、限界費用ゼロでいくらでもコピーすることができます。

    そうするとかつてのマイクロソフト、あるいは現在のグーグルの様にAIそのものは1強の寡占状態、あるいは全世界共有のコモディティになるかもしれません。

    ところが、AIを実現するためには実際にはハードウェアが必要です。

    例えば2030年にAIの市場規模は100兆円を超える、と言われています。この中で最も大きなマーケットとされるのが運輸・物流で約30兆円に上ります。

    この運輸・物流のAI化の中身とは、トラックの自動運転あるいは高度に自動化された物流センター、ということになります。

    さらに卸・小売りが約15兆円。例えば最近、スーパーにいくとセルフレジが非常に目立つ様になりました。レンタルビデオショップでも最近はセルフレジになっています。これも一種のAI化です。

    またFA(ファクトリー・オートメーション)が約12兆円。製造現場のAI化とは言い換えればロボット化・自動化ということになります。

    実際、こうしたAIゴールドラッシュを予兆するかの様な事象が身の回りで起きています。例えば、

     

    ・物流機器最大手のダイフクは2017年3月期 過去最高の営業利益を計上。米国アマゾン社への輸出が絶好調。

    ・ダイフク以外でも、AGVを手掛けるセットメーカーはどこも好調。理由は物流倉庫の自動化・効率化ニーズにある。

    ・有機EL製造装置最大手のキャノントッキは年商の2倍もの受注を抱えており、キャノングループをあげて増産に取り組む。

    ・ロボット用精密減速機メーカーであるハーモニックドライブは、生産能力の2倍を超える受注を抱えている。

    ・その結果、産業用ロボットの納期が昨年の2倍以上に伸びている。

    ・また日本電産グループもロボット用精密減速機のマーケットに本格参入してきており、関連の仕事が増えている。

    ・今まではほぼ売れなかった協業ロボットが、今年に入ってから実際に売れる様になった。ただし日本メーカーではなく、デンマークのユニバーサルロボットが売れている。

    ・米国の太陽光発電市場は2016年に過去最高の伸びを記録し、2015年の2倍近くの発電設備が接続された。

    ・その結果、これまでで初めて他のどのエネルギー源よりも多くの発電容量が接続された。今後も5年間で現在の3倍近くまで成長を続ける見通し。

    ・2017年3月の半導体の世界売上高は308億8000万米ドルだった。対前月比では1.6%増、対前年同月比では18.1%増と大きく伸びた。

     

    この様に、AIの周辺産業ともいえる、AIの手足となるハードウェアを担う会社は皆忙しくなっています。

     

    例えば5月18日(木曜日)に東京会場で、また6月2日(金曜日)の名古屋会場で開催予定の「金属加工業 脱自動車セミナー」でも、こうした話をお伝えしたいと思っています。

    ↓↓↓脱自動車セミナーの詳細はこちらから!

    http://www.funaisoken.co.jp/seminar/018367.html

     

     

    正確には脱自動車というよりも、脱内燃機関自動車ということです。

    AIによる自動運転あるいは部分的自動運転や、EVあるいはPHVが前提の次世代自動車は、明らかに現在と異なる技術が必要とされます。

    例えばアイシンAWも、この2017年3月期決算は売上1兆4311億円、営業利益は昨年対比21.7%アップの1229億円と、過去最高益を記録しました。

    同社はオートマチックトランスミッションという、エンジンよりも単価の高い精密なユニットをつくっています。

    先期の業績が絶好調の理由は、トヨタグループ以外からの受注が全体の6割を占めたことにあります。

    ドイツのフォルクスワーゲンをはじめ、世界中の自動車メーカーから同社の生産能力を超える受注が舞い込んでいるそうです。

    これは見方を変えると怖いことです。

    オートマチックトランスミッションといえば、内燃機関特有の部品です。EVになると必要なくなる部品の代表格です。

    つまり、フォルクスワーゲンなど、目ざとい世界の自動車メーカーは、将来無くなる可能性の高い、オートマチックトランスミッションの開発をやめ、外からの購入に切り替えた、との見方もできるわけです。

    もちろん、内燃機関がゼロになることは当面ないでしょう。

    しかし内燃機関マーケットだけに依存する、というのは明らかに経営的にリスクであり、誰がどう考えても避けるべきだと考えるのは、私だけではないでしょう。

    それよりもこれから、AIゴールドラッシュにより、国内の自動車産業と同等、あるいはそれを上回る可能性のある新たな産業が生まれようとしています。そちらに目を向けることが、これから70年に1度のチャンスをものにすることにつながるのではないでしょうか。

    「金属加工業 脱自動車セミナー」でお伝えしたいことは、そういうことです。




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