2017年2月20日 00:06   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    現在、未来学者として世界中から注目を集めるフランスのエマニュエル・トッド氏が1976年に発表した処女作が、「最後の転落」という本です。

     

    同書は「ソビエト連邦は15年以内に崩壊する」と予測し、実際にその13年後にベルリンの壁が崩壊したことから、エマニュエル・トッド氏の驚異的な先見性を裏付けることになりました。

     

    ちなみに同氏は当時、東欧の農村の人口動態を調べる25歳の駆け出しの学者で、ソ連を訪問したことは一度もなかったそうです。

    そんな同氏が注目したのが次の2つのデータでした。

     

    1)1975年にソビエト連邦の経済成長がゼロになった

    2)乳児死亡率の異常な増加

     

    ソ連の乳児死亡率は次の推移を辿っています。

     

    1971年 22.6%

    1972年 24.7%

    1973年 26.4%

    1974年 27.7%

     

    この年以降、ソ連では乳児死亡率が発表されなくなりました。

    参考までに、フランスの乳児死亡率は次の推移です。

     

    1971年 17.2%

    1972年 16.0%

    1973年 15.4%

    1974年 14.6%

     

    当時、ソ連は「鉄のカーテン」で西側メディアは情報を一切取ることができませんでしたが、同氏によると「人口統計は絶対にごまかすことができない」といいます。

    「乳児死亡率の増加は、明らかに社会の異常な現象である」と。

     

    また「歴史を解読する手法を社会に適用すれば、大概のことは予測が可能になる」とも言っています。

     

    ちなみに、同氏は博士論文を提出した後の空き時間を利用し、わずか3か月でこの大著を書き上げたそうです。

    良い作品は必ずしも時間をかけてつくられていないということ、またその道のプロにかかれば、わずかなポイントで大局が得られる、ということなのです。

     

     

     

    この本を読んで私が感じたことは、日本の20年にわたる経済成長(GDP)の伸び悩みです。経済成長が停滞した結果、将来への不安から出生率も低下した、というのが現在の少子高齢化の要因です。

     

    経済成長が停滞した最大の要因はデフレです。

     

    デフレの最大の要因は、この15年間で1世帯あたりの可処分所得が60万円も減少したことです。

     

    可処分所得が60万円も減少した理由は、この15年間で製造業から218万人、建設業から129万人も雇用が減少したことにあります。同期間にサービス業(卸小売業・宿泊飲食業・生活関連娯楽業・医療福祉業)は324万人の雇用を増やしましたが、サービス業の平均雇用者報酬は製造業比で△186万円、建設業比で△178万円の減少で年収272万円にすぎません。

     

     

     

    現在、政府当局が「賃上げ」を改革テーマの目玉に挙げていますが、その理由は可処分所得を上げてデフレから脱却することにあります。

     

    しかしその為には、我々 製造業関連の雇用を増やさなければならないことがよくわかります。

     

    製造業関連の雇用を増やすためには、製造業が国内で、あるいは先進国で生き残るビジネスモデルを持たなければなりません。

     

    この「製造業が国内で、あるいは先進国で生き残るビジネスモデルを持つ」ということを徹底的に追及している国がドイツでありオランダといったヨーロッパ諸国です。

     

     

     

    例えばドイツはKUKAというロボットメーカーを中国の家電企業に売却しました。その理由は、

     

    ・ロボットはコモディティ化する

    ・ドイツ国内ではコモディティ化した製品はペイしない

     

    という判断になると私は考えています。

     

    実際、中国での産業用ロボットの需要はものすごいものがあります。

    しかし以前のコラムでも述べましたが、ロボットを生産するには次の“3点セット”が必要です。

     

    1)精密減速機

    2)ACサーボコントローラー

    3)ACサーボモーター

     

    上記1)~3)は先進国の一握りの会社しかつくれないコアパーツです。特に 精密減速機 は事実上世界でも3社くらいしかつくれない超コアパーツです。

     

    そしてドイツは上記全てのメーカーを国内に持っています。従って、中国企業がKUKAのロボットをコピーして量産すればするほど、ドイツのコアパーツがどんどん売れる、ということになります。

     

    こうしたしたたかさがドイツという国家にはあるのです。

     

     

     

    さらにしたたかなのは、オランダの家電メーカーフィリップスの戦略です。

     

    同社は世界一の白熱電球メーカーであったにも関わらず、2006年に自ら白熱電球の廃止を提言しました。

     

    この時点で白熱電球の売上がフィリップスの中で、約30%あったにも関わらずです。

     

    同社はただ廃止を提言しただけでなく、白熱電球が地球温暖化に悪影響を及ぼすことを環境NGOや市民社会団体に示し、各国政府が製造メーカーに白熱電球の生産中止を“要求”する様、先頭にたって働きかけたのです。

     

    そしてフィリップス自身は、白熱電球の代わりにLEDライトや省エネ蛍光灯など“環境にやさしい照明”に随時切り替え、2012年には照明部門の売上の7割が省エネ照明となりました。

     

    仮に同社が白熱電球に固執していたら、LEDライトや省エネ蛍光灯といった破壊的技術にじりじりと追い上げられ、大きな損失を出しながら撤退に追い込まれていたことでしょう。

     

     

     

    この様に、彼らは

     

    スクラップ & ビルド

     

    を行っている様に見えます。日本も同様で、伊勢神宮の式年遷宮の様に、永遠の繁栄を維持するためには スクラップ & ビルド が欠かせないのです。

     

    もっと正確に言うと、ドイツやオランダなど長い歴史を持つ欧州先進国は

     

    シナリオ + スクラップ & ビルド

     

    を行っているといえます。

     

    すなわち自ら「シナリオ」をつくり、それに基づいて スクラップ & ビルド を行っているのです。

     

     

     

     

    我々 中小製造業も前述のトッド氏の言う“ポイント”となる指標をきちんと押さえて時流を読んだ上で、自らの「シナリオ」をきちんと描いて国内で生き残る高付加価値型企業を目指していく必要があります。

     

    開催まで1週間となりました 2月23日(木)のセミナーでは、そうしたことを皆様にお伝えしたいと思います。

     

    皆様と会場でお会いできることを、心より楽しみにしております。

     

    開催まであと1週間!

     

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    なったのか?

     

    「2017年部品加工業「時流対策」セミナー」

     

    【日時】  2017年2月23日(木) 13:00~17:00

    【東京会場】(株)船井総合研究所 五反田オフィス

     

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    2017年2月19日 23:15   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    2017年2月17日(金)、船井総合研究所大阪セミナープレースにて、ファクトリービジネス研究会 機械工具商社経営部会2017年2月度定例会が開催されました。

    ◇日時:2月17日(金) 10:30~16:45(受付開始10:00~)
    ◇場所:㈱船井総合研究所 淀屋橋セミナープレイス プラス発想
    ◇テーマ:機械工具商社のための工事・メンテナンス戦略

     

    今月も全国から熱心な機械工具商社経営者の方がお集まりになられました。

     

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    第一講座 : 今月の成功事例(10:30~12:00)
    【テーマ】全国の市況と今後の見通し
    【講 師】㈱船井総合研究所 片山 和也
    【内 容】
    ①全国の市況と対策
    ②機械工具商社の為の収益性向上の成功事例
    ③機械工具商社が取り組むべき「働き方改革」
    ~K・マシン㈱ 代表取締役 菊井健作様による特別ミニ講座~
    ・年商13億から26億へ、売上を伸ばして残業を減らした我が社の働き方改革!
    ・抜本的な生産性向上とは「作業そのもの」を無くすこと!
    ・その他 質疑応答

     

     

    昼食 :12:00~13:00
    第二講座 : 特別ゲスト講座①(13:00~14:30)
    【テーマ】機械工具商社の新たなサービス:集塵機メンテナンスのご紹介
    【講 師】集塵装置株式会社 代表取締役社長 丸山 宏樹 様
    技術営業部 部長 榎本 直弘 様
    【内 容】
    集塵装置の工事・メンテナンス、問題解決が可能なパートナー企業のご紹介
    集塵装置株式会社様は1959年(昭和34年)創業時より、作業環境改善設備から公害防止設備、廃棄物・リサイクル設備までを取り扱う総合プラントメーカー様です。
    「集塵機メンテンナンス.com」、「空気輸送搬送装置.com」、「特注特殊集塵機.com」、「集塵機フィルター・ろ布.com」などユーザー様に対して多数の問題解決サイトを運営、ハイクオリティな提案力、長年にわたる技術蓄積に基づいた設計力と施工力はコンサルティングエンジニアリングとして、お客様から高い評価を得ておられます。
    本講座では機械工具商社のパートナー企業として同社の取り組みをお話しいただきます。

     

     

    第三講座 : 特別ゲスト講座②(14:45~15:15)
    【テーマ】機械工具商社の新たな商材:ピュアキレイザー水処理のご紹介
    【講 師】東洋バルヴ株式会社 環境事業推進部 環境営業グループ 伊藤肇 様
    【内 容】
    新商材としてピュアキレイザー(促進酸化処理法【AOP】を用いた水処理装置)をご紹介いただきます。本製品はオゾン、光触媒、紫外線の3つを一体化させヒドロキシルラジカルを発生、一般細菌、レジオネラ属菌、大腸菌などを強力除菌、水に溶けた有機物を分解する装置です。冷却塔(クーリングタワー)のレジオネラ対策など大手ユーザー様での導入実績があります。

     

     

    第四講座: 特別講義③(15:25~15:45)
    【テーマ】大手企業バイヤーに聞いた、工場資材 最適購買・調達の最新ニーズ
    【講 師】㈱船井総合研究所 山崎 悠
    【内 容】
    工場資材調達に関わる大手企業バイヤーに実際に聞いた、ECサービスの利用シチュエーションや地場取引先を活用するケース、今後望むサービスなどについてお話しします。また機械工具商社 経営部会の会員様が協業で取組める新サービスの可能性についてもお話しいたします。

    第五講座 : 新商品・新サービス開発ミーティング(15:45~16:45)
    【コーディネーター】㈱船井総合研究所 片山 和也
    【内容】
    ・船井総研より新商品・新サービスのご紹介

    次回も皆様のご参加、心よりお待ちしています。

    2017年の機械工具商社経営研究会 定例会につきまして、下記の通りスケジュールが決定いたしました。
    ご予定確保の程、よろしくお願い申し上げます。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

    <2017年定例会予定>

    2月17日(金) 大阪 淀屋橋セミナープレイス
    4月14日(金) 先端町工場視察セミナー
    4月27日(木) 東京本社
    6月23日(金) 大阪 淀屋橋セミナープレイス
    8月23日(水)~25日(金) 経営戦略セミナー(グランドプリンスホテル新高輪)
    10月20日(金) 東京本社
    11月10日(金) 先端町工場視察セミナー
    12月11日(月) ファクトリービジネス研究会 総会 東京本社




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    2017年2月12日 16:07   カテゴリ: 片山和也の生産財マーケティングの視点     

    新嘗のこころ(青林堂:小野善一郎著)という本があります。

    同書を読むと西洋思想と日本思想が根本的に違うことの理由がよくわかります。

    まずユダヤ・キリスト教の聖典である旧約聖書は、「はじめに神は天と地を創造された」の書き出しで始まります。

    つまりユダヤ・キリスト今日の神は、この存在世界を超越している唯一の絶対者であることがわかります。

    これに対して日本の古事記は「天地はじめの時」で物語が始まります。つまりわが国の古伝承では神様が天地をつくったのではなく、天地ははじめから存在しているのです。

    神道の専門家である小野善一郎氏によると、初めからあるということは終わりがないということ、だといいます。

    また昨年は神武天皇2600年式年祭が執り行われたそうですが、わが国の建国の精神は国家の安泰と国民の幸福にあります。

    それに対してアメリカの建国の根本的な精神は「マニフェスト・デスティニー(明白なる天命)」と呼ばれるものです。

    マニフェスト・デスティニーとは、アメリカという国は神がもたらした恩寵であり、西へ西へ、どこまでも領土を広げていくことが神の恩寵にかなうことである、という思想です。

    この精神にのっとりアメリカは西部を開拓し、さらにハワイを植民地化し、そして日本の浦賀にたどりついたわけです。

    当然のことながら世界のグローバル化は避けられない潮流です。従って、我々が日本的に安泰でいたい、と思っていても諸外国、特に欧米は国益を追求してきます。

    従って我々として、彼らの主義思想は熟知しておく必要があります。そうした意味で、私は毎年欧米への視察セミナーを企画しているわけです。

     

    かなり話がとびますが、かつて旧ソ連にはTRIZ(トリーズ)という問題解決手法がありました。

    この問題解決手法は特に研究開発に有効な手法で、例えば従来は何年かかっても解けなかった問題が、数日で解けることもあるそうです。

    例えば何らかの技術課題があった際、属人的にその問題にあたると、せいぜい2~3つの方針しかでないこともあります。

    ところが、このTRIZを使うと100もの方針がでてきたりするわけです。その中で網羅的に最も優先すべき方針を採用するのです。

    つまりTIRZは「抜け・漏れなく高速に答えを出す思考法」であるといえます。

    実際、ソ連は科学技術大国です。世界的な数学者も数多くいます。

    日本がどうしてもうまくいかない高速増殖炉ですが、ロシアは既に商業運転を始めています。また、国際宇宙ステーションを世界で唯一運営している国もロシアです。

    そして旧ソ連が崩壊した際、このTRIZの手法が西側諸国にも入ってきました。このTRIZはアメリカで改良が加えられ、TRIZの中でも現在はIdeation TRIZ(I―TRIZ)という手法にまとめられ、航空宇宙産業を中心に世界中で活用されています。

    日本ではアイディエーション・ジャパン株式会社という会社が展開を行っています。

     

    ↓↓↓同社ホームページ

    https://ideation.jp/

     

    このI―TRIZの世界協会の代表者がボリス・ズローチンという人物ですが、今年の世界大会の際に「これからは日本の時代になる」と明言されたそうです。なぜそうなるのかははっきり言われなかったそうですが、あらゆる国を見てきたボリス・ズローチン氏も、良い意味で日本だけはどうしても理解できなかった、と。

    我々は自身のことをよく知り、また周りのことも知っておく必要があります。自身のことを知るために、またボリス・ズローチン氏が言われていることの意味を理解するためにも、前著は良い本だと私は思いました。




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